2015年2月3〜4日の2日間にわたり、オープンソースのクラウド基盤構築ソフトウエア「OpenStack」をテーマにしたイベント「OpenStack Days Tokyo 2015」が開催された。本稿では、特に、レッドハット社ならびにサイオステクノロジー社の取り組みを中心にして、OpenStack Days Tokyo 2015のレポートをお届けしたい。


なんといっても、注目点は、当日の参加者の数と熱気だろう。セミナーでは多数の立ち見の参加者がでるほどの大きな盛り上がりを見せ、また、各社のソリューションを展示したコーナーでは熱心な参加者がベンダーと話をしていた。OpenStackに対する市場での期待の高さを反映するものとなった。

初日の基調講演に登場したのは、OpenStackプロジェクト共同創始者の1人でOpenStack FoundationのCOO(最高執行責任者)のMark Collier氏が登壇し、『OpenStack Scope : How we’re making the core smaller while embracing the freedom to innovate around it』と題して、OpenStackの現状や課題、今後の注力分野などを語った。この基調講演は、多くのメディアで報道されているので、ぜひ参考にして欲しい( 参考: http://enterprisezine.jp/iti/detail/6561 )

盛り上がりを見せた初日最後の講演を飾ったのが、レッドハット SDN担当テクニカル・ディレクター 兼 OpenDaylightプロジェクト ボードメンバーであるChris Wright氏である。

Wright氏は、『OpenStackとNFVの関係、OpenDaylightプロジェクト最新情報』と題して、オープンソースのSDNコントローラーのプロジェクト「OpenDaylight」の概要および高速化技術を中心としたNFVのプロジェクト「OPNFV」や、OpenDaylightプロジェクトから見た、NFV/SDNとOpenStackの最新情報を紹介した(講演資料PDFは、こちら からダウンロード可能)

アップストリームファースト

Wright氏がまず、強調したのがコミュニティとレッドハットとの関わりについてだ。レッドハットでは、「アップストリームファースト」というモデルを提唱している。アップストリームとは、Linuxなどのオープンソースのコミュニティが開発・メンテナンスをしているソースコードのことを指す。レッドハットのようなLinuxディストリビューションベンダーは、アップストリームで開発されたLinuxカーネルに加えて、多くのオープンソースコミュニティが開発したコンポーネントを組み合わせたパッケージを作成する。

レッドハットでは、アップストリームで開発されたソースコードを組み合わせて、まず、コミュニティプラットフォームを提供するコミュニティを支援する。その後、サポートやソリューションが必要となる企業や団体などに有償で販売するパッケージを提供するというモデルとなっているのだ。OpenStackやJBossなどにおいても同じ考え方で体制が作られることになる。

 

NFVとレッドハットの取り組み

続いて、詳しく紹介されたのは、NFV(Network Functions Virtualization)についてだ。NFVというキーワードは、読者も最近に耳にすることも多くなっただろう。サーバーの仮想化、クライアントの仮想化、ストレージの仮想化と並び、ネットワークにおいても、「ネットワークの仮想化」に注目が集まる。その中で、SDNと並んで、今、最もホットな話題の1つと言えばNFVといえるかもしれない。

現在、ネットワーク機能の多くは、専用ハードウェア上で一体化したネットワーク専用機として提供されている。それでは、購入・インテグレーション・デプロイ・運用には高価になりがちだ。NFVは、仮想化技術を使ってネットワーク機能をx86サーバーのような汎用プラットフォーム上で実現する。このことにより、コストが削減できるだけでなく、「新しいサービスをタイムリーにリリースできるようになる」(Wright氏) という。

NVFが関係するコミュニティは、ETSI(欧 州電気通信標準化機構:European Telecommunications Standards Institute)のNFV ISG(Industry Specification Group)、OPNFV、OpenStack およびインフラ機能を提供するlibvirt, qemu/KVM, Ceph, Open Daylight, Open vSwitchであるという。

これらのコミュニティの中から、Wright氏は、2014年9月に発足したOpen Platform for NFV(OPNFV)について紹介する。OPNVFとは、レッドハット、AT&T、Cisco、HP、NTTドコモなどの通信・ネットワーク関連企業が、Linux Foundationと協力して、新たなオープンソースプロジェクトである。OPNVFは、オープンなNFVリファレンスプラットフォーム構築のために、一貫性のある標準の実装を進める。この活動にも共通するフィロソフィーは、アップストリームファーストだ。そして、さまざまなコミュニティと協調して、プロジェクトを推進するというスタンスも変わらない。レッドハットしては、この成果をRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platformに取り入れていくとする。

OpenDaylightプロジェクト,Open vSwitchとDPDK

そして、Wright氏がボードメンバーをつとめるOpenDaylight プロジェクトの最新情報を紹介した。

OpenDaylightは、Linux Foundationが2013年4月に開始したオープンソースのSoftware Defined Network(SDN)プロジェクトである。OpenDaylightでは、広範囲なベンダーのスイッチやルーター、ファイアウオールなどのデバイスをコントロールできるSDNコントローラーを提供する。2014年2月にOpenDaylightの最初のバージョンであるHydrogenを公開し、2番目のバージョンであるHeliumを2014年9月にリリースした。レッドハットでは、OpenDaylightプロジェクトのプラチナメンバーとして、OpenStack用のネットワーク仮想化などにフォーカスして活動しているという。

さらに、OpenFlowをサポートする仮想環境でのオープンソースの仮想スイッチOpen vSwitch、Linuxカーネルの代わりに、ネットワークパケットを処理するアプリケーションを独自に作成することが可能とするDPDK (Data Plane Development Kit) を紹介し、インテルの検証結果やOpenStack, OpenDaylightコントローラー、Open vSwitch, DPDKを組み合わせたアーキテクチャーを示した。

最後に、レッドハットは、このような多くのプロジェクト、コミュニティが活動するネットワーク領域において、スポンサーとして、また、開発をリードするエンジニアが活躍することにより、NFVに対する取り組みを強化していくと、

Wright氏は、NFVへの取り組み全体をまとめて講演を終了した。

このようにネットワーク仮想化周辺は、多くのコミュニティやプロジェクトが同時並行で早く動いていく。このような意味で、本講演は、今、話題のキーワードであるSDN, NFV, OpenDaylightなどを一覧で理解できたよい機会ではなかっただろうか。これからも、この分野の動きは急速だと思われるので、ぜひ引き続きフォローして欲しい。

展示会フロアーに目を移すと、レッドハットは、OpenStackディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」をはじめ、OpenStack、VMware、Amazon Web Servicesを統合管理できるクラウド管理プラットフォーム「CloudForms」、注目度が上昇しているPaaS領域での「OpenShift」など、OSSベースのクラウド製品を紹介していた。

 

サイオステクノロジーのOpenStackへの取り組み

本サイトを運営するサイオステクノロジー株式会社のセッションにも、他のセッションと同様に多数の参加者が集まり、立ち見がでる盛況さであった。セッションは、タイトル『OSSならサイオス ~OpenStackを考察してみる』と題して、OSS テクノロジーセンター長 黒坂 肇氏とレッドハット製品担当 杉崎道夫氏が、講演を行った。

まず、黒坂氏が、OpenStackだけでなく、オープンソース全体の動向を含めての紹介、また、課題を紹介した。そして、最後に、杉崎氏が、サイオステクノロジー社ブースでのデモンストレーション概要を説明した。

そのブースでは、ネットワールド社から協力を得て、ネットワールド社の環境に構築したRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platformにネットワーク経由で接続し、デモンストレーションを実施していた。ネットワールド社によれば、NetApp社のストレージ機能を活用することで、IOボトルネックを解消し、効率的な運用ができるという。

具体的には、clustered Data ONTAP と協調し、NetApp Unified Driver の拡張したCopy Offloadなどを活用し、紹介していた。多数のサービスが稼働するOpenStack環境では、さまざまなサーバーが稼働している。そして、新しいサーバーを稼働させることも必須だ。

そ のとき、サーバーのリソースをすべて利用して、データのロード、ストアが実施することは、少なからずの不可をサーバーにかけることになる。これを、 Copy Offload機能などを利用することで、ストレージが得意なIO処理をサーバーのリソースを使用せずに、ストレージに任すことで負荷をオフロードするこ とができる。

つまり、サーバーリソースの消費を削減することができるため、OpenStack 環境で、より多くのインスタンスを稼働させることができ、また、余計な負荷をかけずに済むという。

効率的な運用管理には、餅は餅屋に任せる=ストレージについては、ストレージに任せるといったことも重要になるということだ。

実際のデモンストレーションの構成と内容は、ネットワールド社作成の以下の資料と動画を参照して欲しい。

  • OpenStack Cinderを使ったボリューム管理 NetApp Unified Driver スナップショット連携編

 

  • OpenStack Cinderを使ったボリューム管理 LVM連携編

主催者によれば、2日間の参加者は2000人を越えたという。この盛り上がりは、おそらく今年秋に開催されるOpenStack Foundation主催のOpenStack Summit にも引き継がれていくだろう。それまでに、どのようなベンダーや企業が新たな取り組みを発表するのか、期待したい。

PS. 写真はサイオステクノロジー社イベントでおなじみになった「おーぷんソイそーす」