サイオステクノロジーにて、Red Hat, Elastic , EDBなどのオープンソースソフトウェアのエンタープライズ向けソリューションの事業企画・SAを担当している村田です。
2026年のセキュリティトレンドを分析していきますと、境界防御からレジリエンスへと投資の傾向が変化しています。特にMTCR(Mean Time to Clean Recovery)という新たな指標を元にセキュリティ災害から復旧させることへの取り組みが重要視されており、この中でコートベースのシステム管理やデプロイ方式もポイントとなっています。
Elastic Portalの記事にて、MTCRにおける「証拠(SIEM)」の重要性について解説しておりますのでこちらもご確認ください。

SIEMを導入し、いくら汚染箇所が特定できても、復旧作業そのものが手動で、数日もかかっていてはビジネスは止まったままになります。
今回は、MTCRの「スピード」と「確実性」を劇的に向上させるための「実行力」――つまり、Red Hat OpenShift や Ansible Automation Platform を活用した IaC(Infrastructure as Code) と DevSecOps の重要性について深掘りします。
復旧のボトルネック:なぜ「手動」ではいけないのか?
従来の復旧作業は、汚染されたサーバーを一台ずつクリーンアップし、パッチを当て、設定を再確認するという「職人芸」に近いものでした。これでは、AIを駆使した最新の攻撃スピードには到底太刀打ちできません 。
そこで重要になるのが、「直す」のではなく「作り直す」という発想への転換です。
IaCによる「クリーンルーム(IRE)」の自動構築
MTCRを向上させる最も強力な手段は、本番環境から切り離された隔離復旧環境(IRE: Isolated Recovery Environment)をコードで即座に立ち上げることです 。
- Ansibleの役割: OSの設定やネットワーク構成をコード化(Playbook)しておくことで、人為的ミスを排除し、ボタン一つで安全な基盤を再構築します 。
- OpenShiftの役割: コンテナプラットフォームとして、アプリケーション実行環境を迅速にデプロイします。不変(Immutable)なインフラとして機能するため、攻撃者が残したバックドアが入り込む余地を最小限に抑えます 。
- 効果: 汚染されたサーバーの「掃除」を待つ必要がなくなり、復旧時間を大幅に短縮(MTCRの向上)できます 。汚染されてしまった場合、いち早く環境を遮断し廃棄、新たな環境でシステムを再構築してビジネス継続(BCP:Business Continuity Plan)を実現するのも現代的なシステム運用のありかたとなります。
DevSecOpsがもたらす「再汚染防止」の自動化
MTCRの核心は「整合性」、つまり二度と同じ攻撃を許さないことにあります 。ここで、開発(Dev)・セキュリティ(Sec)・運用(Ops)が一体となった DevSecOps の仕組みが真価を発揮します 。
1. SBOMを活用した「健康診断」の自動化
復旧させるソフトウェアの中身が安全であることを証明するために、SBOM(ソフトウェア部品構成表)をリアルタイムでスキャンすることも重要です。
- 仕組み: 復旧プロセスの中に、脆弱性診断(OpenShiftの統合スキャン機能等)を組み込みます。
- 効果: 未修正の脆弱性を含んだまま復旧してしまうリスクを、デプロイ前に自動で検知・遮断できます 。
2. 組織の壁を壊す「共通ダッシュボード」
技術と同じくらい重要なのが、運用のプロセスです 。
- 取り組み: インフラチーム(Ansible/OpenShift担当)とセキュリティチーム(SIEM/調査担当)が共通のダッシュボードや運用プラットフォームを利用することで復旧プロセスを共有します 。
- 効果: 「調査が終わるまで復旧できない」といった部門間のボトルネックを解消し、スムーズな「GOサイン」を可能にします 。
レジリエンスは「設計」と「訓練」で決まる
2026年のセキュリティ対策において、境界防御(壁を高くする)だけでは不十分です 。これからは、「侵入されることを前提に、いかにクリーンな状態で素早く立ち直るか(レジリエンス)」が組織の価値を決めます 。
| ツール | MTCRにおける役割 |
| Red Hat Ansible Automation Platform | インフラ構築の自動化。人為的ミスを排除した高速復旧。 |
| Red Hat OpenShift | コンテナによる不変な実行環境。迅速なアプリ展開。 |
| SIEM (Elastic等) | 復旧の妥当性(いつ、どこまで戻すか)の証明。 |
| SBOM | ソフトウェア部品の安全性確認。再汚染の防止。 |
「穴の開いたバケツに水を戻さない」 、この当たり前を自動化(IaC)と組織文化(DevSecOps)で実現することこそが、2026年のリーダーがIT予算を投じている「レジリエンス」の本質です 。
