レッドハットの森若です。RHEL 7.2から同梱されるようになったRelax and Recover(ReaR)により、システム回復時のパーティションや、LVM構成、ファイルシステム構成の回復が簡単になりました。今回はこのRelax and Recoverをご紹介します。
バックアップからの回復
従来からRHELでは、インストーラをrescue modeというモードで動作させ、回復処理をおこなうことができました。
rescue modeは/mnt/sysimageに本来のシステムツリーをマウントし、各種の操作をおこないます。バックアップやリストアに使えるだけでなく、多くの障害においても非常に役に立つものです。
ディスク交換などでパーティションやLVMなどのディスク構成がなくなっている場合には、以下のようなステップで回復処理をおこないます。
1. 元のディスク構成を回復する。物理的なRAID設定、ディスクのパーティション、LVM、ソフトウェアRAID、ファイルシステム、Swap領域などを元と同じに設定する。
2. バックアップしていたデータをファイルシステム上に回復する。
Relax and Recoverは、1の部分を自動化するところに重点を置いています。また、ReaRが対応している形式であればバックアップデータがどこにあるかを設定しておくことで、データ復旧についても自動化することが可能です。
Relax and Recoverの利用手順
Relax and Recoverの利用は比較的簡単におこなえます。USBメモリを回復用メディアおよびバックアップメディアに利用する場合のおおまかな手順を以下にしめします。
1. yum install
rear genisoimage syslinux
として関連パッケージを導入
2. rear format <デバイス名 /dev/sdc> コマンドでUSBメモリをフォーマット。その後USBメモリを一旦抜いて刺しなおす。
3. /etc/rear/site.conf に回復用メディアの種類と場所、バックアップ方法を指定(ReaRに内蔵されるtarによる素朴な実装を選択しています。)
OUTPUT=USB USB_DEVICE=/dev/disk/by-label/REAR-000 BACKUP=NETFS
4. rear mkbackup コマンドにてレスキュー用メディア作成
バックアップを別途dump/restoreや他のシステムで行う場合はmkbackupをmkrescueコマンドにすることで、ディスク構成だけを回復させるためのメディアを作成できます。
バックアップもReaRでいいの?
ReaRのドキュメント内にも記載がありますが、ReaR内蔵の仕組みでは定期的なバックアップ取得や容量の管理の仕組みがありません。そのため、ある程度の規模がある場合はバックアップ用の各種ソリューションをおすすめします。NETFSやRSYNCといったrear内蔵 の仕組みを利用する場合は管理者が古いデータの定期的な削除を行う必要があります。
rearは複数のバックアップシステムに対応しており、そのデータを利用した復旧が可能です。http://relax-and-recover.org/about/
RHEL同梱のものではamandaがこのような管理をおこないます。RHELには含まれませんが、個人的にはduplicity http://duplicity.nongnu.org/ を利用しています。ReaRのドキュメントでは rsync backup made easy https://github.com/schlomo/rbme が紹介されています。
参考資料
- カスタマーポータル「What Disaster recovery tools are available for Red Hat Enterprise Linux?」
- Relax and Recover ホームページ